隠されたモンスター?・・・バラ色の怪物


バラ色の怪物

バラ色の怪物


笹生作品のたぶんこれが最新のものでしょうか。
昨日の夜から読み始めて、今日の午後に読了しました。(午前中は学校行事。草取りしてました)
さすが面白かったです。


タイトルの「バラ色の怪物」って何だろうな、と思っていましたが、そういう意味だったのですね。
光と闇、善と悪、美しいものと醜いもの… これらは単純に線引きすることはできない。時に、光が闇に、善が悪に、美しいものが醜いものに、と変貌する時がある。


主人公の遠藤トモユキくんのなかにも、この「バラ色の怪物」が潜んでいたわけです。
これはだれの中にもいるものなのでしょう。それが表にで出るか出ないか、だけの違いで。
それが表面にでてくるとき、恐ろしいモンスターのすがたになって襲ってくる。


それが、トレーディングカードに描かれている架空の怪物のすがたと重なってみえてきて…。ちょっと怖かった。
トモユキのその場面、迫力あって(ありすぎて)色彩とイメージとが鮮明にうかびあがりました。眼帯がはずれて、それで、というのがちょっとファンタジーがかっている?某主人公を想起しました。


インターネットのオークションなど大人社会の醜さや暗さを暗示しており、今まで読んだ作品のような爽快感がなかった、っていうのが不満といえば不満かもしれない…


トモユキの今後もですが、定期的に学校でゲリラ活動(人をおどろかせる奇抜な行動をする)吉川という女の子の将来も、どうなるのか心配です。
きっと本人はそれなりに生きていくんでしょうが、周囲はハラハラどきどきでしょうね。


読んだ時期もちょうど本と同じ時期で、長い夏休みが終わった直後が子どもたちにとっては、もっとも危うい時なのかもしれないなぁ、なんて思いました。
大人でもなく子どもでもない中学生、そのものが危うい存在なんだろうけど。
そういう難しい時期の子どもたちを無理なく自然に表現できる笹生さん、今後も期待の作家さんです。