田舎って素晴らしい!!・・・天国はまだ遠く


天国はまだ遠く

天国はまだ遠く


瀬尾さん3冊目ですが、これまで読んだなかで、この話がいちばん好ましく思えたかもしれません。


自殺しようとして、アパートを片付け、会社にも辞表をだして、ひたすら北へ、奥のほうをめざして出発した私(千鶴)。
日本海の山深い田舎の民宿で、自殺しようと睡眠薬を多量に飲んだ主人公。でも結局、死ねなくて・・・
っていうか、翌日(と思っていた)あまりにあっけらかんと目覚めが訪れてしまって。
あれれ?って感じでした。
服用量が少なすぎたのか何なのかわかりませんが、でもそこで死ねなかったと悔やむこともなく、もう死ぬのは怖いから、もういいやとすぐさま切り替えをしてしまった主人公には意表をつかれて面白かったです。
自殺しようと思うほどストレスがたまってたみたいだけど、それって一日ぐっすり眠ることができたら、なくなっちゃうもんなの〜?って思いました。


それから田舎の美しい自然、美味しい食物、何でも親切に教えてくれる民宿の主人(といっても30そこそこで若いんだけど)田村さん、近所のおばさん・・・
それらに癒され、いつしか土地になじみ、自然になじんでいく私、千鶴・・・
その過程は、なんだかとっても好印象でした。


とくに田村さん。登場のしかたがまた面白い!
一応、両親の残した民宿の看板はだしてるけど、お客が来たことなんてほとんどなくって。
千鶴がきたときだって、民宿ってなにをどうすればいいのかまるでわからいみたいで。でもやるべきことはちゃんとやってのけてくれる。
頼もしいですよね。あの方言まるだしな言葉もいい味だしてるし。

ひとりでお料理からお掃除など民宿の仕事から、農作業、はては漁業まで(これは趣味と実益かねて?)何でもこなしてしまう。
千鶴がこの土地に惹かれていく理由のなかに、この田村さんの影響も少なからずあったことでしょう。
ヘンな意味じゃなく、本質的なところで。


最初はいろんなことに渋っていた千鶴だったけど。
魚釣りや鶏小屋掃除など・・・
でもやってくうちに何とかやってのけていけて。
これも田村さんのおかげがあったんだろうけど、何にもできない自信のない千鶴が、ここでいろんなことを体験することで、癒され、自信をとりもどしていく、たくましくなっていく。
そういうところ、読んでいてとても好ましいものがあります。


それでも最後にやっぱり、自分には居場所がないと、またもとの生活へと旅立っていく千鶴だけれど。
これから、どうなるのかはわかりません。
前の会社には辞表もだしたことだし、元彼氏とも別れてしまったし。
わからないけど、でもきっと大丈夫、そんな気がします。


そしていったんはここは自分の場所じゃないと田舎を出ていった千鶴ですが、今後どうなるかは?
私はきっといつかもどってくる日がくるんじゃないか、と睨んでますが。


最後、別れるときの田村さんのようすとか見てるとね・・・いや全然、ふつうなんだけど。でもまたタバコの量が増えてたようですし。


自分では弱いとか大人しいとかいってた千鶴だけど、芯にはけっこう強いものがあり、なんだかんだと文句を言いながら(遠慮もなく)、なんとかやってのけた千鶴なら、きっと・・・と。
千鶴も癒されたけれど、田村さんのほうだってね・・・千鶴のおかげで賑やかで楽しい日をおくれてたと思うんですけどね。