「さらわれる」・・・あの声はなに?


さらわれる (おはなし飛行船シリーズ)

さらわれる (おはなし飛行船シリーズ)


最近、岩瀬さんの本「となりのこども」を読んでよかったので、また何か別の岩瀬さんの本を、と思ってこれを借りてきました。


話はタイトルそのもので、とある少年が行方不明になって、近所の人やら父兄の人やらで大捜索をするという、大事になってしまって…って話。

主人公は小学6年生の芽衣。父が亡くなって転校し、母と兄と3人で新しい家に引っ越して新生活をはじめたのだけれど… 新しく入ったクラスでは、芽衣はうちとけることができず、ひとりでいることが多い。
そんな芽衣が、引越しをする前の家で、時々遊んであげもした二つ年下の男の子、モリくん(守くん)が突然、行方不明になってしまって、芽衣のお母さんも捜索隊に加わることになるのですが。芽衣自身も、友達2人(同じ転校生)といっしょにビラ配りをしたり、写真を貼ったり手伝うことに。
最初の一日はそうやってビラ貼りをしていたけれど、そのうち芽衣のなかにその行為が逆にモリくんと自分を引き離してしまうことのように思えてきてしまうのです。
それで芽衣はこっそり貼られたビラをはがすという行為にでてしまう。


それはいなくなったモリくんは決して、こんなことをして大騒ぎして欲しいなんて思ってないんじゃないかという予感があったからで。
近所にいるちょっと変なおじいさん(アメリカ帰りでジャズかぶれ)の家にも行って、何とかモリくんとの接点を見つけようとしたり。(この老人はモリくんの家の親戚だとか)


亡くなったお父さんについて芽衣が考えるところは、ちょっとわかるって思いました。
芽衣は父のことを何も知らない自分に気づく。
自分の知らない父と知っている父、この二つがあわさって父になるのだと思うんです。
芽衣にとっては、父とはいかにも正しいことばかりを言うような、厳しい父で。でも会社の人とか周りの人にとっては明るくてやさしい人ということになる。


自分の知らない父がいるのだということを知るのは、ちょっとふしぎな感覚なのかもしれません。私も自身も似たような経験があって。
自分の父が家ではもっともらしい顔をしているくせに、会社では楽しくておもしろい人と言われていることを人づてに聞いたことがあり、その時はまるで別人じゃないか、って何かおかしな感じを受けたものでした。


芽衣にたびたび聞こえてきた、「さらわれる」という声。あれはまぼろしだったのか、何だったのか・・・これを読んだ子どもは、きっと芽衣の心の声だったんじゃないかとかいろいろ考えるんでしょうね。芽衣の不安な思いがひきおこした声とか。
ゆれうごく子どもの声とか。いろいろと複雑なものですね、子どもも。


決して悪くはないです。が、どうしても地味な印象があり、また本を読んだ順番というのもあって(マキャモンのつぎだったから)、どうしてもインパクトに欠けるように思ってしまいました。
これ自体をぽんと読んだのだったら、まだしも・・・・だったかもしれません。