優しさが原点?・・・「おまけのこ」


おまけのこ しゃばけシリーズ 4

おまけのこ しゃばけシリーズ 4


しゃばけシリーズ第四弾です。
「こわい」「畳紙」「動く影」「ありんすこく」「おまけのこ」の6篇。


今回も、ほのぼのした若だんなと妖たちの日常がのぞけて大変楽しかったです。
やはりこれに限りますね。ホッとします。


それぞれよかったですが、最初の「こわい」に出てきた妖、狐者異(こわい)はいつもと違った雰囲気でした。
関わった者全てを不幸にしてしまうという妖… 当人どころか家族や周囲の者まで巻き込んで影響を及ぼしてしまうというから、全くコワイコワイ。
優しすぎる若だんなは、そうと知ってからもやはり手をさしのべずにいられなくて。
これはどうなんでしょうか。妖の血をひく若だんなだからこそ、不幸はまぬがれ、何ともなかったのか。それとも?
若だんなの流した涙が無駄にならなければよいのですが。


「畳紙」は以前にも出てきた、厚塗り化粧のお雛の話。そうそう、こんなこともあったけ、と思い出しました。
お雛はどうして化粧をすることになったのか?
そしていまは許婚のいる幸せな身でありながら、いまだ止められないのは何故?
いつもは脇役に徹している、屏風のぞきがメインで活躍(?)しています。なかなかおもしろかったです。


「動く影」は珍しく過去の話。
若だんな、一太郎(時々、名前を忘れちゃうんですが)と、三春屋の栄吉の子どもの頃の話です。
これも若だんなの貴重な思い出をのぞかせてもらったようで、とてもよかったです。
噂話の真相を探るというのが、何やら怪談や都市伝説の真相を探るような感じがしておもしろかった。
怖い話も元をたどれば・・・ってところですね。影がうようよいるシーンはかなり気持ち悪そうですが。


「ありんすこく」では、突然に吉原の禿(遊女の見習いみたいなもの?)を足抜けさせるとか言い出した若だんな。
さては若だんなもお年頃? かと思えば・・・てな具合。
遊女って、病気になったらそれまでで、医者にもかかれないし、休養にださせてももらえないんですね。
きびしい現実があったんですねー。
若だんなの目論みは如何?ってところですが。
足抜けさせるための計略で、若だんなの女装もちょっと見たかったです。似合ってたりして〜


「おまけのこ」は、謎解きの部分はそれほどたいしたことはなかったのに、何故か心に残っています。
やはりこれも普段は脇役で、表にまわることのない鳴家が、活躍していたことによるでしょう。
章ごとにあるカットの絵。これがまたかわいい。真珠をかかえたヴィーナスって趣向で?
そういえば今回、表紙にも鳴家が散りばめられていました、ほんと可愛いなあ。


鳴家なんてどこの家のものもみな同じにみえるのに、若だんなだけが・・・ というところにちょっと感動しました。
いいなあ!若だんな。さすが!!
鳴家の気持ちがすっごくわかりました。若だんなの優しい目に守られて、さぞかし鳴家も心たのもしく感じたことでしょう。


どの話にも、底辺にこの若だんなの優しい心持があって、とてもおだやかな気持ちになれます。
そして、各話で人びとが起こした事件や出来事も、みなそういう人としての優しい気遣いや、思いやりが底にあって、それでも・・・という感じで、出てきたものでした。
思いが結果にうまく結びつかないで、歪んでしまったり、とんだ騒動を巻き起こしてしまったり、と人さまざまです。
まさに、世にある人の数ほどあるのでしょう、そうした行き違いは。


江戸の人情味あふれるこのシリーズ、まだまだつづきそうです。マンネリになっても何でもいいから、ずっと書きつづけてほしいと思います。