「10月はたそがれの国」


10月はたそがれの国

作者: レイ・ブラッドベリ, 宇野利泰
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 1965/12
メディア: 文庫


やっと読めました。もう、なんだかんだ言って、一週間近く読んでました。
でもそれだけに、ブラッドベリを堪能できました。
全部で19編入った短編集。内容も、幻想的なもの、ちょっとおどろおどろしいもの、コミカルなもの、と多岐にわたっています。
人によっては、好きになれないところもあるかもしれませんが、私は大丈夫でした。
怖い話も、ぞっとしながらも、その感じを楽しんでいたような。怖いもの見たさなのでしょうか。
あの雰囲気、ちょっとありませんね。よかったです。


怖いなあと思ったのは、「つぎの番」「骨」「壜」「小さな殺人者」「群集」でした。
とくに最初の三つ。あいだに一個挟んでるけど、大体連続して続いていて。これはちょっときました。
「つぎの番」なんて、えーっ!?どうなっちゃったの〜!?と、不気味な結末を案じさせるかたちで終わっていました。
「骨」は、現実にはありそうにないことだけれども、本当になったら怖い。お話だけですんでくれてよかった、って感じ。
「壜」も同じ。やっぱりああなっちゃったんかな?って感じで。ネタバレになるので詳しくかけませんけど、実際に読んで確かめて、って言いたいです。
「小さな殺人者」はねぇ〜、妊娠中の方は読まないほうがいいかも。精神衛生によくなさそう。
「群集」も何がどうなってるのかわからない部分もあったけど、それがさらに恐怖を煽っているというか。
全体に、怖い話というのはそういうものなのかもしれませんね。その恐怖のもとの正体はわからないけれど、でも怖い、というような。


本当にはありそうにない話なんだけど、でも実現しちゃったりしたら、絶対イヤ!という話が多かったような気がします。
まあといっても、幻想的雰囲気があるせいなのか、ストレートに怖いという感じではないのが救いなのかもしれません。


「たんぽぽのお酒」にも通じるような、「少年の日の憧れ」めいた作品もいくつかありました。
「みずうみ」「使者」など。
あと「ダッドリー・ストーンのふしぎな死」もよかった。どういうことかわかったときには、ああそうだったのか、って感じでした。(あいまいな表現で失礼)


10月というこの時期にふさわしい内容。ハロウィンを思い出す作品もあり、これも好きになりました。
「アンクル・エナー」「集会」・・・それぞれよかった。この手のお話は他の本にも収録されているそうで、そっちを読むのもまた楽しみです。
「塵よりよみがえり」という本が、この一族の話ばかりを集めた作品らしいです。


読んだあと考えさせられたのが「びっくり箱」「大鎌」でした。奇しくもこの2編は連続してありましたが。
「びっくり箱」の方は、読み始めからわけがわからなくて、最後になったら解明されるのだろうと期待して読んでいたのに、結局最後の一文になっても判然としないまま、でした。
この、こうだ!とはっきりした結末をもってこないで、読者に想像をゆだねるというの、ブラッドベリの特徴なのかもしれません。


ネットで検索して調べたら、この「びっくり箱」の発想をもとにして映画「ヴィレッジ」が作られたのではないか?という意見を多数読みました。そうか、あの話もそういえばそうだった、と思い返しました。
終わってみてはじめて全体像が見えてきたら、あら不思議、読み終わってはじめてそうだったのか、という感じ。
「びっくり箱」の方は、明確にこれと示されてはいませんでしたが。


「大鎌」は、偶然その麦畑のそばの家にたどりついた一家4人が…っていう話。
死んだ男の遺言は、ここへ通りかかった人物に、自分の家も財産もすべて相続するという不思議な話。
いったい何がどうなって?という感じでしたが、どういうことなのかがわかったとき、蒼然とならずにはいられませんでした。
永遠に麦を刈り続ける男・・・哀れですね。どういう運命のいたずらで、そうなってしまったのか。
問わずにはいられなかったでしょう。


他にもいろいろ感想を述べたい作品がいっぱいでしたが、このへんでやめておきます。それぞれ味わいのある作品集でした。長かったけど、読んでよかったと思います。


ブラッドベリのほかの未読作品も、これからぼちぼちと読んでいきたいと思ってます。