ぶらんこ乗り


ぶらんこ乗り (新潮文庫)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)


いしいしんじさんでした。本プロでも評価が高い方と逆に低い方とがそれぞれあったので、いったいどんな感じなのかな、と思い、この本を手にとりました。


もしかしたら私も合わないのかもしれないなどと、構えながら読み始めたおかげで最初のところはおそるおそるという感じでした。
でも読んでいくうちに、だんだんリラックスして読むことができました。文章も読みやすく、すんなり入ったという感じでした。
ただちょっと現実にはありえないような話が多かったので、そこらへんだけはちょっと引っかかりましたが。
ダメだと仰る方はこの辺がダメなのかなあなどと勝手に想像したり。
ストーリーはごく単純で、最後に起きてしまった悲劇についても何となく予期していた感じがあって、ああやっぱりそうなるのか、とは思いました。


弟とおねえちゃんの関係がすごく心があったまる感じでした。
この弟というのがたった四歳であんな文章を書いてしまう天才! このことにおどろきっぱなしでした。
サーカスのぶらんこ乗りの話がなんだかとっても心に残りました。何より文章がすごくいい感じで、なんともいえない気持ちになれます。


こんな巧みな文章をあんな小さな子ども書いたこと事態、驚きでおよそ現実にはありえそうもないことに思え、また全体の話も妙に作りすぎている、きれいすぎるものを感じてしまうことなど時々あったのですが。


それでも弟の書く話(とくに動物たちの話)を読んでいるうちに、そんな気持ちなどきれいさっぱりどこかへいってしましました。


これは大人のための童話、なんですね。児童文学というよりも・・・だからきれいすぎても、非現実的でも気にならないってことで。


文庫版の解説にもありましたが、私もホントなのかウソなのかわからない、いしいしんじさんの書くお話にだまされて(乗って)あげてもいいかな、という気持ちになりました。