絵本6冊その1 「満月の夜の伝説」


満月の夜の伝説
作者: ミヒャエル・エンデ, ビネッテ・シュレーダー, 佐藤真理子
出版社/メーカー: 岩波書店
発売日: 1994/12
メディア: 大型本

エンデが文章を書いて、それにシュレーダーという方が絵をつけた、大型絵本です。

絵はすごい緻密な感じの絵で、エンデの幻想的な雰囲気にふさわしい印象をうけます。
内容をかいつまんで(?)いうと、以下のようになります。


世のなかに悪魔や天使がいるとまだ人々に信じられていた時代のこと。人里はなれた山奥に敬虔な隠者が住んでいた。彼は若い頃に愛を誓った女性に挙式の当日に他の男と駆け落ちされてしまったという過去をもつ。おまけに、彼自身の商人だった父親も嵐で船をすべて失って、一晩で無一文になってしまった。この二つのことのせいで、彼は世を捨て、書の世界に入ったのだが、それもある聖者の言葉によって粉砕され、全てを捨てて山奥に入ったのだ。
そうして山をほっつきあるいているとき、彼は奇妙な夢を見る。渦巻く火焔の夢・・・炎のなかから、この地にとどまって私を待て、という声にしたがって、彼はその地にとどまり、約束を待つことにしたのだった。


そうして待っているあいだに、彼の体は老いさらばえていた。食べるものも野生の木の実や根っこ、薬草の類で、一日身をよこたえ瞑想をくりかえすという日々。訪れるのは動物たちのみ・・・


そんな日々に終わりがきた。ある男が偶然、彼のもとにやってきたのだ。その男は、若い頃に恋人を辱められ、その相手を殴り殺してしまったという経緯のせいで、死刑になるところを逃げ出して、盗賊団に加わったり、盗みや乱暴などありとあらゆる悪をくりかえすという人間になってしまった。


そんな男が隠者のもとを訪れて、だんだん改心していくか?と思うとそうでもなくて。隠者の話を感じ入って聞くのはいいが、ちっとも理解ができない。隠者のほうはこの男を救ってやろうと、いろいろ神の話だとかしてやるのだったが。
かえって隠者に盗んだものをもってくる始末。


そうこうするうちに、隠者が奇妙なことを言い出す。
今後、満月の夜には、ここへ来ないでほしいと・・・・
男は了解して、しばらくこなかったが、そのうち隠者に変化が起こっていく。外見だけは同じだが、その心がだんだん男から離れて、どこか遠くへいくような気がしてきたのだ。


悔い改めろ、と熱心に勧められることもなくなっていったし、どこか落ち着きのないまなざしをするようになっていったし、とこういう具合。
どうしてなのか?と怪しんだ男は、とうとう約束をやぶって満月の夜に、隠者のもとへしのんでいく。隠者が言っていた、満月の夜ごとに訪れるという、信じられないひとの姿を見に行こうとして。
隠者はおまえのような不信心者が見ても、決して眼にはみえないだろうといったのに・・・男にはある光景がみえた。
二羽の怪鳥グリプスに引かれた車のなかに、光りかがやく存在がみえたのだ・・・


恍惚とつかれたように凝視する男。
だが、しかし男の脳裡に、隠者の言葉がよみがえる。
どこかがおかしい、何かが・・・
そして次の瞬間、男がとった行動により、隠者は救われる結果になる。


かいつまんで書いたつもりが、全然そうなりませんでした。
ごめんなさい。
けっこう長い話で、絵本なのに読むのに時間がかかりました。どっちかっていうと、大人向け? カラーの挿し絵つきの短編みたいな感じでした。
それにしては豪勢な装丁でしたが。高尚な絵画集という印象。


よくわからなかったのが、男が見た夢のこと。
神のお告げか何か知りませんが、よくそんなたった一つの夢を見ただけで、あんな行動をとれますねえ、と。それが隠者ゆえのものなのかもしれませんが。
私にも、この盗賊の男みたく、隠者の話は高尚過ぎたようです。
盗賊ということで、グイン・サーガにでてくる、ある登場人物を思い出してしまいました。
彼よりは、この男のほうがまだましのような気もしますが。
結局は、隠者を救ってくれたわけですからね。