絵本6冊その2 「おばけのババヤガー」


おばけのババヤガー―ロシア民話 (えほん・ワンダーランド)
作者: カロリコフ, 宮川やすえ, カバリョーフ
出版社/メーカー: 岩崎書店
発売日: 1988/02
メディア: 大型本


ババヤガーの絵本が他にもあるかと思い、図書館で借りたものです。
しかし、これは先に読んだ絵本「マーシャと白い鳥」とは全く違う内容でした。
その最大のものは、魔女ババヤガーがここではいいひとになっている点でした。
あちらでは、子どもをさらう悪い魔女という印象だったのに。
ヒロインを助け、望みの達成に手をかしてやります。この魔女がひとりだけじゃなくて、3人でてきます。昔話ではよく三回くりかえされるというのがよくありますが。
鉄のくつと鉄の帽子と鉄の杖を三つずつ持って、娘は望みを叶えるために旅にでます。


その望みというのは、いなくなってしまった愛する男を捜したいというものでしたが。
もともとは、この男は、父親が市場へいくのに頼んだお土産の羽根から生じた男でした。
鷹の羽根だったのですが。
当然、市場には売っていなくて父親はある男からこれをもらいました。
この、お金で買ったものではなくて、もらったものだということに、ミソがあるみたい。


男は夜のあいだだけマリョーシカと時をすごし、昼間は鷹の姿になって飛び立っていくのですが、意地悪いお姉さんたちに邪魔されて、とうとう会えないことになってしまいます。


最後に、ヒロインのマリョーシカは、男をだまして魔法にかけ、ともに暮しているという女王の宮殿へとたどり着きます。そして3人のババヤガーにもらった魔法の品とひきかえに、王子のもとにいくことに成功するのですが、王子は眠ったまま目をさましません。
とうとう三度目に王子は目をさまし、そのあとはハッピーエンドに、という結果になるのですが、ここで変わっているなあと思ったのが、国の人々をあつめて王子が、「おかねで夫を売ろうとした女の人と、とおくからたずねてきた女の人と、どちらがぼくをあいしているでしょうか!!」と語りかけたら、たちどころに人びとはマリョーシカの方がより王子を愛しているとわかったっていうんです。
それ以前にも、ババヤガーの小屋で、すぐさま娘が王子を愛していることがわかったっていう下りがありましたが、そこんとこもまた不思議なところです。
論理ではなく、感覚で、感情でわかったっていうことでしょうか。


他にも、あの意地悪だったお姉さんたちは本当にちょい役だったのね、あとから何にもでてこないし・・・とか、けっこう頻繁にうしろを見てはならない、とマリョーシカが言われてたけど、あれはどういう理由でだったのかな?見てたらどうなってたの? とか、この王子さまは女王さまの夫だったの?魔法をかけられてだまされて、夫にされちゃったのかな?なんて、いろいろ疑問がうかびました。


モスクワ郊外の村パレフで作られている美術工芸品、パレフの箱に描かれている絵と同じ、伝統的技法をもちいて、この絵本の絵も描かれているそうです。
そう思ってみると、きれいかな?
本の後ろのほうに詳しく書いてありました。ババヤガーの記述もあり、いい魔女だったり、悪い魔女だったりする、ロシアの民話の登場人物だそうです。
この民話も、10〜11世紀に作られた古い民話では?とあります。
最後に、王子が民衆に語りかけた、っていうの・・・本当にあるそうです。
家を持っている家長たちの民会というのがあって、そこにみんなが集まって裁判を行ったそうです。王子もそういう裁判をうけたってことになりますね。
そういう意味ではなかなか興味深い絵本でした。