子どもの頃に読みたかった!「ライオンと魔女」ナルニア国物語

ライオンと魔女 (カラー版 ナルニア国物語 1)

ライオンと魔女 (カラー版 ナルニア国物語 1)

カラー版ナルニア国物語を全巻購入〜! 映画公開前に読もう、と思って大慌てで再読しました。

私が最初に読んだのはもうずっと前。だけど子どもの頃、ではない、です。子どもの頃には存在だけは知っていて、ずっと読みたかったけれど、なかなか読む機会が訪れなかったのです。とうとうしびれをきらし、当時は少年文庫も出ていなかったので、高いハードカバーの本を全巻購入しました。いつだったのか、ずっと思い出せなかったんですが・・・たぶん短大時代だったんではないかと。あのお金のない時期に、よく買ったなあ!と自分でもふしぎですが。いずれにせよ、大人に限りなく近い年代でした。その後、学校を卒業して数年たった頃に、やっと少年文庫がでて、友人がまとめて買っていくのを羨ましそうに見ていた記憶があります。
それ以来、ずっと再読もしてこなかったのですが、今回読んでどうなのかなあ? と、ちょっと興味がありました。

とりあえずは第一巻「ライオンと魔女」。
初読の時も思いましたが、この巻は最初からいやな感じがつきまといました。もちろんタンスの扉をひらいて別世界にいくという設定はおもしろく、たちまち魅力にとりつかれた私でしたが。

いやな感じ、とはやっぱり次男のエドマンドのこと。
この子はちょっと意地悪なところがあり、素直でない男の子だったのですが。ルーシィが初めてナルニアにいって、それから自分もまた行ったのに兄姉に話すときには、そんなのごっこ遊びをしてただけ、といってしまう。
エドマンドの意地悪は、兄のピーターも見抜いていて、そんなこと言うなよとたしなめるのでしたが。その嘘がばれたときに、ピーターが激昂してエドマンドのことを、まるでけだものみたいに言ってしまうところ…そのへんが何かとってもいやだったのでした。

エドマンドの性格ゆえに白い魔女の気をひかれて、こういう結果を生んでしまったんだろうけど。このことがきっかけとなって、兄弟のあいだに亀裂が生じたのはとてもいやだなあと思ったのでした。

それに、天邪鬼な私には、いい子がひたすらよくって、悪い子はこらしめられる、という勧善懲悪的なところが好きになれなかった、というのもあります。
ちょっとひねくれ気味のエドマンドに感情移入してしまったから、かもしれませんが。これがちょっと引っかかった。大人の目からみた「いい子」がいちばんで、「悪い子」はいけません、「いい子」になりましょうね、という無言の説教を聞かされてる気分になってしまって。そこのところを微妙に感じてしまって、この巻が好きになれなかったのかもしれません。


ストーリーについていうと、この巻ではごくシンプル。とんとん拍子に進んでいく、という感じでした。とくに、アスランが登場してからは…。
それまで白い魔女の支配する冬が100年も続いていたのに、アスランが登場しただけで、春が訪れ、魔女の支配も危ぶまれてくる。ちょっとあっけないほど、完全に魔女は敗れてしまいます。単純だけど、子どもが読む分にはきっといちばん納得できる展開なのでしょう。

そういう意味でも、やっぱりこの本と初めて会う、いちばんいい時は子どもの時なのだ、と言えそうです。素直な心で、ベベンシー兄弟たちといっしょになって、ナルニアにいった気になれるでしょう。
実際、家のタンスを意味もなく開けてみたくなったりして。そういう経験って、貴重だと思います。

大人になってから読むと、いろいろ余計なことに気をまわしてしまい、十分に物語を堪能することができないような気がします。

アスランのことにしてもそう。最初に読んだ時よりも、今回の方がよりキリスト教的なものを感じてしまいました。
とくに、アスラン白い魔女との取り決めで、石舞台へと歩を進めていく場面なんか…。スーザン、ルーシィにともなわれて、とぼとぼと歩んでいくアスラン。まさにそのものズバリ。あれっきゃない、って感じですね。

その後の展開についてもいえることだし。魔法とか何とか書かれていますが、そういうこととはあまり関係ないような気がしてしまう。
アスランの正体が○○○だから、だからああなった、ってことで。

日本の子どもたちには馴染みがないんだと思うけど、イギリスの子どもたちが読めば、すぐにアスランがだれなのかわかる、ってことなのかな?そういうところはどうにもならないですね。溝みたいなもので…。

とはいえ、ナルニアの物語は、まだまだこれから、です。これからもっともっと楽しいストーリーが始まっていくのだから。そのことは私も知っています。時々、冷めてしまうかもしれないけど、童心にかえって読みたいですね。

私がこの巻でいちばん好きなのは、行って帰るところ。しかもあんな形で。あれだけはファンタジーとして納得です。爽快!