「カスピアン王子のつのぶえ」

カスピアン王子のつのぶえ (カラー版 ナルニア国物語 2)

カスピアン王子のつのぶえ (カラー版 ナルニア国物語 2)

前作から一年後、ふたたびナルニアを訪れた4人兄弟。ナルニアではあれから、数百年の時が過ぎていた…

今回は、タンスを通り抜ける、という方法ではない、また別な経路をたどっていましたが。否応もなく呼ばれるというパターンはよくありましたね。エルリックシリーズで有名な、ムアコックのファンタジーを思い出します。

現実世界では1年、ナルニアでは数百年。その違いが、物語に奥行きをもたせます。ついにたどりついた場所がどこか気がついた、という場面ではおどろきを感じずにいられないでしょう。ファンタジーというものを初めて読む子どもたちにとっては。

私は二度目だったせいか、段階を追って気がついていく子どもたちを見守ってるような感覚でしたが。がんばれ、もう少しよ!てな感じで。

むしろ、ナルニアの空気を吸ってるだけで?だんだんかつて王や女王だった頃の雰囲気にもどっていく子どもたちのほうがへぇ〜!って感じでしたね。そういうもんなんでしょうかね?

カスピアン王子の物語はすっかり忘れていました。なので、もう一度読む気分で楽しめた、と思います。
あの博士・・・コルネリウス博士の話はおもしろかったですね。喋り口調もいかにも、な感じのものものしさ。この博士の言葉で、ナルニアの真の歴史が語られました。これも忘れていたからおもしろかったです。

カスピアン王子のまわりにあつまったものいう動物たちや小人族など、キャラクター的にもおもしろかった、と思います。アナグマの松露とりとか、リスの枝渡りとか、ネズミのリーピチープとかね。カスピアンにたてつく黒小人のニカブリクだの、赤小人のトランプキンとかも… いろいろバラエティに富んでました。

あいかわらず、アスランはやっぱり・・・ですね。信じるものにしか見えない、というところとか、やっぱりキリスト教的なものを感じてしまいます。それが悪いというわけではなく、純粋なファンタジーとして楽しむためには少々、邪魔っぽく感じてしまうんですね。

後半、バッカスの神がでてきたり、昔話的な感じになりますが、そういう昔話や民話が好きな方はおもしろく感じるのかも。
木の精とか水の精があらわれるシーンでは、やはり「指輪」を彷彿としてしまいますが。
影響はやっぱりあったでしょう。トールキンとルイスの関係って深いものがあったんでしょうね。トールキンナルニアをファンタジーとしてはちょっと…とかいう話が、1巻の解説か何かにありましたが。

むかし読んだときには、この巻もけっこうおもしろがって読んでいた記憶があるのだけど、今回はそうでもなかった気がします。時々、眠くなったし。

小人のトランプキンの言葉がむかしっぽい感じでなにやら懐かしかった。「おどろき、もものき、さんしょの木」とか、「びっくり、しゃっくり」とか、「なんて、かんてん、ところてん」とか・・・ 口癖みたいなもんだけど。瀬田さんのそういう古めかしい訳もいいけれど、時々言い回しがふつうとちょっと違っていて、読みにくい部分がありました。

次は、いよいよ「朝びらき丸」の冒険譚です。わくわくする面白さ、という点ではナルニア随一だった気がするので…。