初挑戦!!朱川湊人「花まんま」

花まんま

花まんま

私も挑戦してみました。朱川湊人さん…
この本が直木賞をとった時には、ほとんど興味がなくって素通りしていた私でしたが、今回読んで認識を新たにしました。

それは、おっもっしろい〜じゃないのぉ!!でした。
もっと早く読めばよかった。どれも昔懐かしい(といっても年代的には私より上ですが)日本の風景。
いまはそのほとんどが失われてしまった原風景のようにうつりました。ほんとにどの話もおもしろかったです。しかもみなそれぞれの味があって・・・。もうするすると、次から次へと読んじゃう感じでした。

私は中でも「花まんま」がよかったです。タイトルを見たときから、どういうことなのかと思ってたけど。そうか〜、こういうことだったんだ〜と感慨深かったです。あのお父さんの思い、つらいですよね。だけどここに描かれた兄妹の関係っていいですね!
とくにお兄さんがいい。妹があんなふうなことになって、ふつうは笑ってすますことなのかもしれないのに、親身になって聞いてやって。面倒見はいいし、さりげなくお母さんに対する気遣いも忘れないところもいい。お母さんがせっかく作ったお弁当なんだから食べなきゃ!と妹を諭すところなんか…涙がでるほどいい子ですよね。
現代の子たちだったら、どうだったでしょうか。こういうところも昔ならではのものだったのでは?と思いました。

けれど、いいものばかりだったわけではなかったわけで、過去の日本も。
「トカビの夜」や「凍蝶」などのように差別したりされたり、することってあったわけですから。いまの私たちはそんなことなどすっかり忘れていますが。そんななかで描かれた人情厚いドラマ、いいですね。

そして大阪の下町で起こった、何と言うこともなく、そしてちょっとふしぎな出来事の数々…。
「送りん婆」はちょっと怖かったけど、あのおばさんいいですね。最後の言葉もそれらしいというか、何と言うか・・・そういうこともあるのかもしれないなあ、と思いました。

「妖精生物」はこのなかで異質な作品でしたね。ちょっとぞくっとする感じ。怖いというか、気味悪いというか。最後が後味悪かったです。家族の不幸をステップにして飛び立ってしまったあのお母さん。あれで本当によかったの?という感じ。ニコちゃんマークの妖精生物、ネーミングがまた変わってていかにも妖しげな感じが漂ってる。あれからどうなっていくんだろう、と想像しちゃうとまたぞくっときます。

「摩訶不思議」はほんとならすごい状況のはずなのに、なんかほのぼのしてて好きです。かつての自分の女たち3人をそろえて、満足して昇天していったんでしょうか。ラストもほのぼのするなか、ピリッとパンチが効いてるようで、よかった。いちばん明るくほがらか(大らか?)だったあの女性・・・本当は???ってね。

全体的によかったので、もし今後文庫化されることがあったら、ぜひ手許に置いておきたい、と思いました。あと2冊(「かたみ歌」と「わくらば日記」)あるので、読んだらまたアップします。