小市民シリーズ「夏期限定トロピカルパフェ事件」

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

2作目を続けて読めてよかったです。
さて前作は連絡短篇集でしたが、これは長編になっています。最初の1章、2章は雑誌で連載されたもので単独でも読めるようにはなっているのですが。
書き下ろしで序章と3章以降の物語が書かれたようです。
そのせい、というわけもないでしょうけど、私はあまりこれを長編というふうには読まなかったような気がします。

読み終わって、巻末の解説を読んで、そうだった!これって長編だった!と気づいたくらいなんですから。馬鹿ですね。

帯に〈小佐内スイーツセレクション・夏〉とありました。私はこれを、前作に引き続いての夏バージョンという意味合いでしか捉えていませんでした。
でもちょっと違ったのですね。

高校2年の夏休みに入った小佐内さんと小鳩くん。その初日に小佐内さんが小鳩くんの家にやってきて、突然ある紙を手渡し、「わたしの、この夏の運命を左右する…」といって否応もなしに小鳩くんを引き込もうとするのです。
それは、この夏限定スイーツをセレクトしたリストと店の位置をあらわした地図でした。

甘いものは嫌いじゃないけど、それほどには…という小鳩くん。それから来る日も来る日も小山内さんの言うがまま、ベスト10の第十位からおすすめスイーツを食べさせられるハメに…それと同時に小鳩くんは感じていた。小佐内さんに何か違和感のようなものを。
それから、小市民を志す2人に、驚愕の夏休みが訪れることになるのでした。

一読後、感じたこと。それは、あま〜いパフェと違って、現実って厳しいんだな、ってことでした。
前作はどちらかというと、推理のための推理。謎解きのための謎解きって感じで、そこはかとなく遊びめいたものが漂っていたのですが、今作はちょっと違いました。
日常の謎系ミステリと思っていたら・・・なんてものに化けてしまったんでしょう?

小佐内さんは、小鳩くんはこれからどうなる? 続編が待たれるところです。

小佐内さんのスイーツセレクションは、リストをながめているだけで垂涎もの!なのですが。これだけの一品が随所に散りばめられているだなんて、なんていい街なのでしょう!木良市って。
最強のパフェ、「夏期限定トロピカルパフェ」だけは、ちょっとご辞退申し上げたいですが。詳細については本をお読みいただくとして、羨ましいような怖いようなシロモノであることは付記しておきます。