「今夜はだれも眠れない」ダレン・シャンほか

ヤングアダルトのスター作家が、戦争で困っている世界の子どもたちへのチャリティのため夢の集結。大人も子ども夢中になる、今夜は眠れない珠玉の短編集。『だれも寝てはならぬ』の姉妹編。


・・・ということです。『だれも寝てはならぬ』はまだ読んでいないのですが、そのうち借りようかと思ってます。

12人の作家の顔ぶれは以下の通り。

メアリ・ホフマン(『ストラヴァガンザ』)、ジャクリーン・ウィルソン(「ガールズ」シリーズ)、オーエン・コルファー(『アルテミス・ファウル』)、アニー・ダルトン(『聖なる鎖の絆』「エンジェルズ・アンリミット」シリーズ他)、レイチェル・コーン(未邦訳)、ジェシカ・アダムズ(未邦訳)、ジェレミー・ストロング(『すっとび犬のしつけ方』他)、ブライアン・ジェイクス(『レッドウォール伝説』『幽霊船から来た少年』他)、ヴィヴィアン・フレンチ(「ちゅーちゅーおそうじがいしゃ」シリーズ、『あざみ姫』他)、ジリアン・クロス(「悪魔の校長」シリーズ他)、ビヴァリー・ナイドゥー(『炎の鎖をつないで』他)、ダレン・シャン(「ダレン・シャン」シリーズ他)

このなかで私が読んだことがある作家は2人のみ、でした。それも最初と最後・・・
確かにメアリ・ホフマンの『ストラヴァガンザ』は面白くっては好きだけれど、ダレン・シャンは1巻を読んだのみ。今回の短篇集では、ダレン・シャンのものがいちばん長く、ウェイトを占めているという感じでした。 あの「ダレン・シャン」だもんね!それも当然か?と思われるのですが・・・

残念ながら、私はダレン・シャンってやっぱり私に向いていないのかも、という思いが新たになってしまいました。「ハグロサン」は作者が山形県羽黒山に行ったときにアイデアを思いついて書いたそうですが。何というか…最後があまり気に入らなかったし。

他の短い作品のほうが、もっとこれは!と思えるものがあって、私はそちらの方が印象に残っています。

例えば。メアリ・ホフマンの「フリークエントフライヤー」
これは両親が別れて暮らすようになり、オーストラリアとポーランドを行ったりきたりしている少女が主人公。飛行機で印象的な男の子に出逢って・・・という話。「十二時間の日没」。飛行機が地球の自転と反対に飛ぶ場合、ずっと日没を見続けるようになることがあるのだそうです。

ジャクリーン・ウィルソンの「本物のレベッカ」は全部、手紙文でできています。作家へのファンレターなのですが。経過が面白いです。

オーエン・コルファーの「メアリの髪」。いたずら好きの元気な女の子が目にうかぶようでした。自分の髪が大嫌い!という女の子の気持ち、わかります。「赤毛のアン」を想起。

アニー・ダルトンの「今日は非番の天使たち」はその名の通り、天使がでてくる話。死んだ子が天使になる、という前提ですが、全文、ティーン・エイジャーの女の子のお喋りって感じ。翻訳物とは思えないほど、でした。最後に甘いお菓子のレシピが載ってます。

「最後のハロウィーン」レイチェル・コーン作。考えたことなかったけれど、ハロウィーンにもやっぱり年齢制限ってあるんですね。日本じゃ実感ないですが。最後のハロウィーンに兄よりたくさんのお菓子をもらうこと!を目標にしていた女の子の話。たくさんお菓子をくれる家とか時間帯とかをチェックしてるのがすごい!? かと思うと、味もそっけもない健康志向のお菓子ばかりのところはいやだとか、市販のお菓子以外はママに即刻捨てられるから、手作りのお菓子は食べられなくなったとか、結構シビア。アメリカ的!?

ジェシカ・アダムス「ヘンリーの『占星術ガイド』」は、何故か星座の紹介?これが何をしめそうとしているのか、意図がいまいちわからないのだけど。健康占い、私の星座しし座は背中と心臓が弱いのだそうで! 気をつけようかな?(笑)

ジェレミー・ストロングの「フェアリーテールじゃないよ」、これは割りとよかったです。「大昔、まだこの世に歴史というものがない、うそとまことの区別もなかったころのお話」。ルークという、頭のよい若者がお姫さまのいる山の上へ求婚に・・・イバラの茂みや悪い魔女、トロルなど昔話で御馴染みの存在に現実的手法で切り込んでいく。おとぎ話とちがって、現実はきびしいのだよ、というお話。

「クマのマグワースとアルジー・ボタン」ブライアン・ジェイクス作。私は読んだことはないけれど「レッドウォール伝説」というのは確かネズミか何かが英雄になってる話なんですよね。動物を擬人化して描く話は正直あまり好きじゃないので読もうとは思わなかったけど。この短編もいっしゅの動物が主人公。クマのぬいぐるみなんですが、二匹のクマたちが毒蛇のデビルスネークを撃退する、勇敢なお話でした。結構、読ませます。蛇と戦いシーンなど。スピード感がありますね。

ヴィヴィアン・フレンチ「マイティー・ワンの娘」。これも私はよかったです。父と娘がでてくるのですが、この2人は人間じゃなくどうやら神さまと呼ばれる存在のようです。娘が初めて世界を造って・・・という話。“地球(アース)”と名づけたその惑星がどうなったか、その顛末。一種の神話なのかもしれない。

「王さまへの手紙」ジリアン・クロス。
これはまた短い話! 何歳か書いてないけど小さい子が、アルフレド(アルフレッド?)王さまに手紙を書く。「ケエキの作りかた」を教えてあげようと。王さまへの素直な敬愛の情とかそういうものが、この短い手紙から感じ取られました。ちなみにこの作者は『デーン人をやっつけろ』という本を書いているそうですが、未邦訳。「ケエキをやいてるときのちゅうい」、として。「デエン人だの、本だの、てっぱんのうえにないもののことをかんがえない!」とありました。原典の本をちょっと読んでみたいような気になりました。イギリスの方だそうですし、もしかしたらアルフレッド王というのは歴史的人物と関係あるのでしょうか?

「海からの贈りもの」ビヴァリー・ナイドゥー、これはもっと短かった!実話のようですが。海のかなたから流れ着いたガラス瓶に入っていた手紙を読んで、送り主に連絡をとって文通することになったとか。そんなことって、あったんですね。お話というよりは、エッセイみたいな感じだと思いました。

そしてダレン・シャン「ハグロサン」。
霊山の頂上にお供えものの焼き菓子をもっていかされた男の子ハグロサン。でも途中でおなかがすいて、我慢しきれずそれを食べてしまう。お供えを食べてしまったハグロサンは精霊に他のものを何でもお供えするから、許してくださいとお詫びするのですが・・・・
世界中の子どもたちが幸せになりますように、というお願いをしてしまったがために、それからハグロサンは山から下りることなくずっとそこで死ぬまで生きていくことになるのでした。
ラストがちょっとナルニアの最後みたいで、あまり好きになれませんでした。永遠に、平和にずっと愛につつまれて生活していく、まさにめでたしめでたし? とんでもない!!
こういう逃避的な考えかたは嫌いです。死んだあとのことなんてだれもわからないことだけど。あんまり甘いことだけ考えていたくない、そんな気持ちになりました。