物語が動きだす・・・「海鳴りの石3上 ―動乱の巻−」山口華

海鳴りの石 (3上) (グリーンファンタジー (3))

海鳴りの石 (3上) (グリーンファンタジー (3))

3巻目です。これはサブタイトルがあらわすように、まさしく動乱の章でした。前巻で愛する王女サティ・ウィンと別れ、城を脱出した「僕」フェナフ・レッドは、ただのレッドとして生きる決意をします。世継ぎであることを拒否し、ただの人として行動しようと、流されるようにあちこちの地をさまよい歩く「僕」ですが、その心はつねに揺れ動いています。旅の途中、夏至の魔法の作用で、また「僕」はフェナフ・レッドの魂と入れ替わることになりますが、その後のフェナフ・レッドもまた同じこと。
伊達もののもと幕僚武官、サラン・サチムに、世継ぎとして物事の核・・・中心人物として立ってくれないか、と誘われたときも。どうしてそんなにも拒まなければならないのか、とちょっと苛々しましたけど…。

ニディナ城のあるアルネブ島のお隣、ミルザム島の大公となったエオルンには、ちょっと失望。ああいう人だったのね、とがっかりです。醜いですね。

このミルザム島や、自由都市カイン・ニディナ、ミルザムのお隣の島ニハルなど、レープス諸島のさまざまな地で、フェナフ・レッドと仲間たちの戦いの日々がつづきます。

また一方、現実の世界にもどった「僕」にも、また違った試練が用意されていました。洞窟探検にいった恋人のエミーと物語好きの近所に住むチビ助が迷い込んで抜けられなくなってしまったというのです。けれどこれがまたより複雑な事態に発展していって・・・。エミーとチビ助の顔をした、あの二人が登場。これは、どうなるのか興味しんしんでした。

そうして意外といえば、リーズの存在。初めて登場したときから、チョイ役にしては思わせぶりな書きかたで、これは何かある!と睨んでましたが。こういうふうにつながるとは。鍵はあの白い骨で作った笛でした。こういうの、ファンタジーではよくある小道具だと思うんですが、私は好きです。

そしてそれは海竜の存在に結びつきます。洞窟のなかに現われた海竜…まるであれも一種の夢のなかのできごとのように思えました。これまた現実からかけ離れた世界。レープスじゃないまた別の世界。これって、現実とレープスの世界の中間にある橋渡し的な世界だというんでしょうか。不思議な空間でした。
そこで「僕」が経験したこと…これからほんとにどうなるんでしょうね?とわくわくしてました。

本物のフェナフ・レッドが夢のなかで、この洞窟のことを見るのも面白い! 二人の意識がつながってる証拠のようで。

物語の本筋は、大国ハイオルンとそれにおもねる一派ら、現在アルネブ島の重要人物となっているクライヴァシアン伯、それに対抗すべくまた自分の野望のため動いていくエオルン大公派と、三つ巴の戦いへとなだれ込んでいきます。フェナフ・レッドら、自由を求める仲間たちはこれにどう対抗していくのでしょうか。海竜と呪われた石の秘密といっしょくたになって、物語は進んでいきます。