クリスピー物語


お菓子と抱き合わせになった文庫本ということで、興味を持って購入しました。出た当時はけっこう話題になっていたようです。同じように買った人は大勢いるみたいで、売れてましたね。

ずっと読む暇がなくて積読(当然、お菓子のほうも未開封)。やっと読んだら、ほんとあっというまに読めました。

“殻を脱ぐ”というテーマのもとに書かれた、6人の作家によるアンソロジーですが、それぞれ楽しめました。何より初めて読んだ作家さんのものが多かったので。その分新鮮だった気がしました。

内容は以下のとおり。


「クロスロード」鈴木光司

最初の文章でちょっと引きましたが、まあまあでした。銀座のクラブで働いてる「カナ」のところにある日、たずねてきた男性は・・・? このカナもだけど、この男性の運も相当な悪運。ほんの1〜2ページで駆け足でこの人の人生を語ってしまった。二人の人生が交差して・・・その後どうなっていくんでしょうか?


「魚になったミジンコ」大石圭

初めて読んだ作家さん。勉強もスポーツも趣味も何にもない、冴えない僕が、ある日・・・という話です。タイトルそのまま? みじめだったミジンコが・・・ってところ。


「押し入れ」牧野修

これは変わっていて、面白かった。小学生の頃に新居として引っ越した家の押し入れに主人公が見つけたものとは・・・? ちょっと怖くて、でも優しい話。


「チョウになる日」森山東

これは最初、どうなることかと思ったけど、最後は後味は悪くはなかったです。ふとしたきっかけで男が入った喫茶店(普通の家ふうの)で、強引にもらってきた青虫の入った壜。奥さんは結婚を迷っている男性には必要なものなんだ、という。
青虫はいつかチョウになって・・・さあどうなるでしょうね?


「少女、あるいは自動人形」

これも割りとよかった。人形作家の作ったオートマータは人間そっくりの外見をしていた。肌触りも動きも、それに声まで!人形作家の紳士はマリアという少女をモデルにオートマータを作ったのだという。ところが、そのマリアは本当は・・・、いったいどれが本物なのかわからなくなります。


「妻の誕生」北野勇作

生まれ変わりたい、といって僕の妻は卵になった。僕は妻が卵のなかで眠っているあいだ、卵をあたため、そして卵料理を作る。卵をたっぷり使ったシフォンケーキ4つにオムレツひとつ。結果はいったい何が変わったの?と疑問を抱きそうにもなるけれど。生まれ変わりたいと思って、卵の殻をやぶって出てくる。これはまさにテーマをストレートに描いてます。


知ってる作家と知らない作家はちょうど半々でした。お初だったのは、大石圭牧野修森山東。どれもこんな短い話なのに、十分楽しました。

お菓子(チョコレートの殻を脱いだキットカット)の方はまあ普通のお味でしたけど。
こういう試みは楽しいから、第二弾とかないかなあ。