「イサナと不知火のきみ」たつみや章

イサナと不知火のきみ

イサナと不知火のきみ

たつみや章さんの新刊。この方の文章を読むのはすごい久しぶりだったりします。別名の某シリーズのほうはずっと積読していますし…。
久々の児童書新刊、嬉しかったです。

この話はたつみやさんの新しいシリーズということになりそうです。著者初の女の子が主人公の話、ということで注目していました。
そのせいかどうか?最初はちょっと戸惑いがありましたけど、徐々に読みなれていきました。

帯をそのまま引用すると「海の民の娘と龍王の子が出会ったとき、悪しきものにて閉ざされた深海の闇に一筋の光が届いた!」ということになりますが、著者お得意の日本古代ものですね。
あとがきに書いてありましたが、日本は海と切っても切れない生活をしてきたはずなのに、昔話にはあまり海を舞台にしたものが少ない、それなら自分が書くしかない!…ということとでこの物語を書かれたそうです。

考えてみればそれもそうですね。代表的な昔話といったらやっぱり「浦島太郎」ぐらいしか思いつきません。あと「海彦山彦」とか?
どうしてなんでしょうねぇ? 

たつみやさん描く海の物語も、なかなかでした。
始まりの雰囲気は、前作「月神シリーズ」と似たような感じかな?と思いましたが、それも主人公の女の子イサナが龍王の子(実際には子供ではありませんでしたが)と出会ったときから、微妙にずれてきましたね。

100%シリアスなお話というよりも、ちょっとコミカルな感じですね。何より龍王の子ヒコナの性格に問題がありすぎ!?イサナとヒコナのやりとりは、掛け合い万才のようで面白かったです。

嵐で流れついたという異国(?)の少年クレの存在も気になります。乗っていた船がどうして嵐に遭遇したのか、については大体わかってきましたが。これからどうなるのか興味津々、というところ。

後半では、イサナの髪を結うシーンでちょっと思わせぶりなセリフが飛び出したり。
最初は生意気なガキんちょ的風貌だったヒコナも、ラストでは立派に変貌してみせましたしね。ただこれは外見のみの話で、中身については全く変わってないとも思われますが。

ファンタジーとしても、海の香りを感じさせる一品で、不知火の一族とか、龍王の一族とかいろいろ神話的な部分も満足させてくれる感じでした。
続きがとても楽しみなシリーズになりそうです。