「アレクサと秘密の扉」パトリック・カーマン

 

9月に新しく出るファンタジーのシリーズということです。訳はあの金原瑞人さん。アスペクト社から…。
出版前に、読者の反応を見るため?モニター募集をやっていましたので、さっそく応募してみました。100名という枠があったらしいのですが、私はみごと当たったらしく本が送られてきました。(今も第二期モニター募集やってるみたいです)

それが7月頃の話。本当ならモニターのアンケートを8/15までに返送しなければならないところでしたが、なかなか読めずに、間に合いませんでした。
でもまあ、出すだけ出そうと、アンケート用紙は埋めましたが。


この本はエリオン国物語三部作の1巻です。
アメリカで爆発的人気を集めているファンタジーだそうです。「著者のパトリック・カーマン氏が毎晩娘に聞かせるためにつくった物語が、口コミで評判を呼び、全米での大ヒットにつながったという話題のファンタジー」ということです。


子どもに聞かせるために作った、というと、C・S・ルイスの『不思議の国のアリス』などが思い出されますが、少しずつ毎晩、語られていく冒険譚、という感じもします。いかにも子どもが好きそうな要素の入った、夢あふれるファンタジー、といったらよいでしょうか。


主人公アレクサという少女が住む、エリオン国という世界には、4つの町が登場してきます。ルーネンバーグ、ブライドウェル、ラスベリー、ターロック。
この4つの町をむすぶ街道が通っているのですが、面白いのは周りがぐるりと巨大な壁にかこまれているという点です。それも道から町まですっぽりと。
壁に囲まれた町だったらよくあるけど、町同士をつなぐ道そのものも壁でかこまれているなんて、初めて聞きました。


そのせいで、4つの町は外の世界と完璧に分断されているのです。壁のなかだけの世界です。とても乗り越えるとかいうことのできない高さだったらしいですから、その光景を思い浮かべてみたら、きっと壁が周囲を圧倒しているような、そんな印象をうけますね。ちょっと息苦しいです。


主人公のアレクサという少女も、きっとそういう息苦しさのようなものを感じていたに違いありません。それと同時に外の世界への興味も。12歳という年齢です、当然でしょう。


町の人びとには、外の世界と接触することは禁じられています。何故なのか?それは話のネタバレにつながってしまう怖れがあるので書きませんが、アレクサは外への憧れを捨てきれず、とうとう外へと通じる秘密の入り口を見つけるのです。


勇気をふるってひとり、町の外への冒険に乗り出していくアレクサ。
そんな彼女に、次から次へと様々な試練がふりかかります。そうして周囲の人びと、動物たちにたすけられ、アレクサは大きく成長していくのでした。


この話は、少女アレクサの成長物語としても読めるし、エリオン国という秘めた世界の謎解きということでも楽しめます。大人でも読めるけれど、これはやっぱり同じ年頃の女の子が読んだら、きっと自分のことのようにも思えて楽しいんじゃないでしょうか。

アレクサに最初、批判的な人物パーヴィス・コッチャーという人物が出てくるんですが、後半になってちょこっと違ってきます。てっきりただの悪役かと思ったのに。読者にとっては、意外な裏切り方をしてくれてよかったですね。今後、彼がどうなっていくのか見物です。

アレクサが外へでる鍵になる、ジョーカスタという工芸品が出てくるけど、それも魅力的小道具ですね。これが出てくるシーンは謎解きの雰囲気があってよろしかったです。

だいたい面白かったけど、後半、ちょっと展開が急ぎすぎたかな、という難点があったかもしれません。

前半のアレクサの冒険を描いてみせた部分はなかなか読ませるところがありますが、後半の戦いにいたる部分、あれはちょっと急展開すぎたんじゃあないでしょうか。どうも駆け足のような状態でした。
町の裏切り者セバスチャンの正体にしても、全然そんな素振りとかなかったので、あれれ〜?って感じでした。私は全くべつの人か、と思ってましたよ。意外な人物でしたね。


そして、町から追放された囚人たちの存在。結局、あんなふうなことになってしまって。もっと組織だっているのかと思ってたらそうでもなく。あっけなかった…。


でもまあ、まだ三部作の1冊目。これから新たな話がふくらんでいくんでしょう。表紙にもなってるエリオン国の地図にも、思わせぶりな名前をつけられた場所が記載されてるんですよ。ダークタワーとか、針の谷とかね。これらがあとの2巻でみんな紹介されるのかな?楽しみのような、不安のような。


というのは、某ファンタジーシリーズを連想してしまったものですから。あちらは五部作でしたけれども。訳者が金原瑞人さんだから、つい期待してしまうってのはあるんですけどね。


とりあえず、9月に出るという第1巻を楽しみに待ちましょう!〜、というところでしょうか。