「彩雲国物語 心は藍よりも深く」雪乃紗衣

シリーズ8冊目です。もう、ここまで来たら、先を読むのをとめられない感じです。
それくらい良かったです。


前半は、謎の蜜柑事件?なんて感じのことがあり、ちょっと軽い雰囲気でしたが。
それも、秀麗が影月に関する事実を、あるところから聞くまで、でした。託された言葉と貴重な医術書…
もしかして?という予感がはっきりと形をとって現われてきた瞬間でした。


茶州で奇病が流行っていることを知った秀麗は、自分のできることを最大限に生かして、あらゆる手を打とうと尽力します。

その姿には、素直に感動できます。「官吏とは」と、秀麗が周囲に説いてみせた言葉が、すごく素直に心に落ちてきました。


官吏とは、民草をたすけるもの。


ごくごく当たり前のことなんですが。このことが実践されるのは非常に少ないのではないか、と思います。
秀麗のように、誠心誠意、私心を消してまでして取り組もうとするのは。
彼女にしてみれば、官吏になって暴利を貪り、民を虐げることしか考えてない手合いは全くお話にもならないんでしょうね。


秀麗の言うことは理想なのかもしれないけど。本当にそうなってくれたらどんなによいのに、とそう思わせてくれるものがありました。


朝廷の並み居る臣下たちの前で、主上に啖呵切ってみせた秀麗はほんとにかっこよかったです。
そのひとことひとことが宝石のように貴重で、心に深く切り込んでくる言葉でした。


つねに民のことを考え、行動する彼女。まさに、彼女が治める国があったとしたら、それは最も幸福な国だった、と言えるのかもしれません。


影月くんと香鈴ちゃんの別れの場面もせつないです。奇病のことを知って、真っ先にかけつけようとした彼の心もわかるし、その彼を想って泣く香鈴の気持ちもよくわかる。
どうにかして、二人には幸せになって欲しいものだけど。無理なのかなぁ?


ほか気になることも…。秀麗が宮城で突然、出会ったあの美男子さん。漂家の当主だいう、あの人はいったい?
そんなビビるような相手なんだろうか??? その正体は今のところおあずけ、という感じですが。


それと伝説の医仙があの人だったなんて!今までちょい役としか思ってなかった人が、って感じでした。非常に頼もしい性格のお方のようですね。


病にたおれた人を助けるために、また王都を遠く離れようとする秀麗を心配するたくさんの人びとの想い…
なかでも劉輝との別れ際に交わした約束、それらを胸に抱いて秀麗は旅立ちます。