2010年に読んだ本 (続き)


図書館ラクダがやってくる―子どもたちに本をとどける世界の活動図書館ラクダがやってくる―子どもたちに本をとどける世界の活動
こちらも同じく。図書館にちなんだ本。世界中の、本を待ち続ける子どもたちに本をとどける活動を国ごとにそれぞれ解説している。子どもたちはみな本が大好き。本を読む表情がとてもいい。日本はこんなに豊かなのに、これほどまでに本を待ち望む人々はいるのだろうか。子どものうちは多少読んでも、大人になっても本を読み続ける人は少数派のような気がする。物は豊かだけれど、心は…? 国民読書年だとか言っても、そこのところがなおざりだったとしたら、何にもならないんじゃないかと思った。
読了日:06月05日 著者:マーグリート ルアーズ
牛をかぶったカメラマン―キーアトン兄弟の物語牛をかぶったカメラマン―キーアトン兄弟の物語
何かと思うだろうが、ほんとにあった話を絵本化したもの。ユニークな方法で鳥に近づき、写真を撮ることに成功したキーアトン兄弟の冒険の日々を描いたノンフィクション絵本。牛の剥製をかぶったり、高い木の上にのぼったり、一見変人…だけど、物事に真摯に取り組む姿は立派だと思う。巻末に実際の鳥や卵の写真とともに、弟が撮影する姿なんかも写っていて興味深い。
読了日:06月05日 著者:レベッカ ボンド
ママ、お話読んでママ、お話読んで
タイトルから予想していた内容と全然、違ってた。忙しすぎて読んであげられないのではなかった…そこにはある訳があった。母と子の関係がすごくよい。子どもを抱きしめて、お話して、そしていっしょに本を読む。うらやむべき親子関係。自分を反省すべきかも。
読了日:06月05日 著者:バシャンティ ラハーマン
青い目の王子青い目の王子
ヒマラヤ山脈の麓、ガンジス川流域の王国に生まれた王子ニラナーヤナには鳥や獣と心をかよわせることができるという、ふしぎな力があった。王子の青い目がもたらした過酷な運命とは… ブッダの前世を描いた創作ファンタジー。読後に、しんと静まるものを感じた。
読了日:06月06日 著者:三田 誠広,佐竹 美保
カッコウの卵は誰のものカッコウの卵は誰のもの
ミステリーとしても、大変おもしろく読めました。 才能って、何だろうと思った…。 結局、人の手では才能は作れない、それを証明してみせたかのような小説でしたね。天賦の才ともいうように神さまからの贈り物なんだと思って、それをさらに生かすために磨くこと。それができた人が本物だと思う。好きじゃなきゃ努力もできないわけだし。某人物にとっても、あの結末は最良の結果だったのかも。お父さんの思いにもじんときた。
読了日:06月10日 著者:東野 圭吾
希望(ホープ)のいる町希望(ホープ)のいる町
料理が他人の人生を変える、ってすごいことだなぁ、と思った。アディの絶品アップルパイ食べてみたい! 主人公はウェイトレスで、人生楽じゃない、って早くも悟りかけてる、十代の女の子。いかにもアメリカの高校生って感じだけど、生い立ちがすごい。赤ん坊の頃、ウェイトレスだった母に捨てられ、おばに育てられ、父親も知らないという…人と違った人生歩いてきて、あんな達観に至ったのかも…。けれど自分で名付けたホープ(希望)という名前に相応しい、前向きなところはいい。元気をもらえる。ストーリーも含蓄のある言葉の数々も素晴らしい。
読了日:06月12日 著者:ジョーン・バウアー
永遠の夢永遠の夢
永遠をテーマに、ファンタジー、SFとジャンル違いで描かれた中篇集。雰囲気はどちらもブラッドベリという感じだけれど、個人的に「たんぽぽのお酒」の流れを汲む「どこかで楽隊(バンド)が奏でている」が好きだった。メルヴィルの『白鯨』を模した「2099年の巨鯨(リヴァイアサン)」、正直いって理解に及ばないものを感じてしまった。私の読解不足なのだろうが・・・雰囲気は好きで興味深く読んだことは読んだのだけど・・・。
読了日:06月15日 著者:レイ・ブラッドベリ
緑金書房午睡譚緑金書房午睡譚
古書店が舞台のファンタジーとは、まさに好みの真っ只中ですが、途中まではワクワクしながら読んだのに、ラストは何だかな…わかったこともあったけれど、まだまだ謎が残されていて、この続きはまたいつか、なんてね。ダーク・レディとか、ナルニアとか気をそそられて、あれ?って感じだった。本の森という発想はすごく好き。私もあそこに行ってみたい。いやもしかして夢で行っているのかも?
読了日:06月17日 著者:篠田 真由美
さびしい女神―僕僕先生さびしい女神―僕僕先生
少し時間がかかってしまったが、おもしろく読めた。が、相変わらず、漢字名に疎く、登場人物をすぐに忘れてしまうのはいかがなものか、と思う。僕僕先生の過去らしき姿が登場してきて、いよいよラスト近くなってきたのかな?何だかんだいっても、王弁のこと気にかけているんだなあ、と嬉しくなった。絶望的ににぶちんの王弁にはちょっとねぇ、って感じだった。
読了日:06月23日 著者:仁木 英之
なりひらの恋なりひらの恋
美男子なのに後ろ向き、高貴な出なのにマイペース…それでもみんなに愛された「なりひら」の恋物語。帯にはそう書いてあったけれど、恋多き魅力ある男性というよりは、不運な人生に流されるままに、その時々に様々な女性に勝手に惚れられ、受け身に生きてきた男性、という感じ。そんな中で初めて自分から愛した女性というのがずいぶんな歳の差。今の時代だったらほとんど犯罪なんじゃないだろうかってぐらい。最後までぱっとしない男性のぱっとしない人生だったけれど、歌だけは優れていた。歌って、ため息みたいなもの…その言葉が印象的だった。
読了日:06月26日 著者:三田 誠広
時計塔のある町 (カドカワ銀のさじシリーズ)時計塔のある町 (カドカワ銀のさじシリーズ)
いろんな要素が詰め込まれていすぎて、ごちゃごちゃっとした印象があった。大勢出てくるキャラクターも曖昧な感じ。〈ジュンスヰ印〉の玩具楽器というアイデアは良かった気がするが、生かしきっていないような。 あと別世界なのに、電話やトラックなどがあって違和感があった。今よりむかし、という設定ならもっとそれらしい雰囲気を出すべきではないか。いかにも、という設定があるだけで、子どもだましのファンタジー世界だったように思う。
読了日:06月27日 著者:藤江 じゅん
道徳という名の少年道徳という名の少年
装丁が美しい本。道徳という名、ジャングリン少年を描いた、少しエロチックな大人の絵本。 寓話的でもあり、抽象的でもある…。いいか悪いかは別にして、桜庭さんらしいな、との感想を持った。
読了日:06月27日 著者:桜庭 一樹
新参者新参者
ドラマは全く見てません。どちらにせよ、ドラマ終了間際になってやっと図書館の予約の順番が回ってきたわけだし。でも、噂にたがえず面白かった。事件の真相もだけど、そこにたどりつくまでの加賀刑事の、どんな些細な謎でもそのままにしておかないで、解明していくというところが… 殺人事件を解決させるだけじゃなく、どういう経緯があってそんなことになったのか…人間の心理を解決していくような姿勢がよかった。人形町の風情とか人情とか感じられて、そこのところもよかったな〜ミステリとしてはよい読後感だったのも○。
読了日:07月02日 著者:東野 圭吾
少女外道少女外道
短編集。戦前戦後を舞台に、少女の秘められた退廃美、情念が交錯する。文章の美しさにうっとり。 まさに快感なのかもしれない。
読了日:07月04日 著者:皆川 博子
小さいおうち小さいおうち
何とも言えず、素晴らしかった。戦前、戦中、戦後と、時代の波をくぐりぬけながら、赤い三角屋根の小さいおうちで、美しい奥様と、可愛い坊ちゃんとの生活を守り通した女中タキの物語。 甥の健史が盗み読みしているのを知った上で、書きつづけられていたので、まるで他の誰かに語りかけているかのようでした。 それだけに最後の一章が生きてきます。教科書にのっているような歴史と、当時の人々の目線に立った歴史というものはずいぶん違うのだなぁ〜
読了日:07月06日 著者:中島 京子
おれのおばさんおれのおばさん
グループホームで暮らす中学生、ということで目新しさがあった。父親の逮捕をきっかけに、母親から離れて児童養護施設ほうぼう舎で生活することになった陽介。母親の姉であるおばさん、恵子さんはほうぼう舎の母とも言える存在で、陽介はおばさんとの関わり、同室になった仲間との関わりあいで次第に成長していく。多感な中学生にこそ勧めたい。
読了日:07月13日 著者:佐川 光晴
ハサウェイ・ジョウンズの恋ハサウェイ・ジョウンズの恋
課題図書だからというのではなく、純粋に自分の興味で読んでみた。タイトルから想像していたのとは違って、話的にはとても地味だった。高校生がこれを読んで面白がるとは思えない。どちらかといえば、読むことに慣れた大人の読者にこそ、という気がする。西武開拓時代のアメリカの、厳しい自然描写が淡々と描かれ、ハサウェイ・ジョウンズの初々しい恋、起こった凶々しい事件、とさまざまな事柄が時の流れとともに流れていく。ハサウェイ・ジョウンズは実在の人物だというが、その人生の片鱗を描いた本書はしみじみと深い。彼の語る話もまた魅力的。
読了日:07月15日 著者:カティア ベーレンス
ダストビン・ベイビーダストビン・ベイビー
ゴミ箱に捨てられていた生まれたての赤ちゃん…なんてひどい!かわいそうに、と思うだろうが、そ後、その子が歩んできた道を順にたどっていくうちに、思いは変わっていく。産みの母がいなくても、もうどうでもいい。もっと大切な、愛すべき人たちはたくさんいた… 自分が自分であるために、いてくれた人たちのことを思い、大事にする。自分が生まれた瞬間がゴミ箱であっても救いの手を差し伸べてくれた人はいた。その瞬間こそ、自分が自分として存在してきたときなんだ…そう悟る少女がたまらなく愛しいと思う。頑張れー!と応援したくなった。
読了日:07月16日 著者:ジャクリーン ウィルソン
タトゥーママタトゥーママ
何というか… 私たち日本人の常識から見たら、とんでもない! って感じなのだが。体中、タトゥーだらけのダメママでも、子どもにとっては唯一の大好きなママなんだろうな。ドルの姉スターにとっては、たまらない状況だったんだろうけど…。それでも…ってのはある。最後のところの急展開には、唖然だったが。お父さんが見つかっちゃうのも……だけど。マリーゴールド、立ち直って欲しいな。
読了日:07月17日 著者:ジャクリーン ウィルソン
ウィッティントンウィッティントン
動物が喋るファンタジーはあまり好みではなかったけれど、これはそれぞれの動物たちに個性があり読めた。猫のウィッティントンの話す歴史物語と、動物たちの日常とがなめらかにつながっているようで違和感はなかった。それと読むことができずにいた少年ベンの話とが互いにうまく絡み合って、よい感じだった。最後の文章がよい。読むことは生きること、それを証しだてている。
読了日:07月20日 著者:アラン アームストロング
ミムス―宮廷道化師 (Y.A.Books)ミムス―宮廷道化師 (Y.A.Books)
王子として何不自由なく暮らしていた少年が敵の手に捕らえられ、道化の身分に落とされる。しかも地下牢には父王とその家臣らが… 逃亡すれば、父の身に危険が及ぶ。道化の師匠ミムスの弟子となり、敵王の言うなりにならざるをえない王子。その悲惨さを描きながら、一方で師匠ミムスの真の姿に迫る。人間性における善と悪の二面を見事に描いている。白にも黒にも染まる可能性のある人間の悲しさ… 時に滑稽に、時に悪魔的に。師匠ミムスの変幻自在の顔にも魅せられる。児童書とは思えない深みと魅力があると思う。
読了日:07月24日 著者:リリ タール
ぼくらの輪廻転生 (カドカワ銀のさじシリーズ)ぼくらの輪廻転生 (カドカワ銀のさじシリーズ)
イマドキの17歳、代表として選ばれた(?)授がとあるきっかけで飛び込んだ精神科のクリニックで繰りかえし見させられる、リアルな夢。それは授の前世の断片だった。人間はあやまちをくりかえしながら段々、よいほうへ向かっているのだと信じたい気持ちはわかる。少々駆け足だったが、希望のある明日を予感させるような終わり方がよかった。
読了日:07月26日 著者:さとう まきこ
建具職人の千太郎 (くもんの児童文学)建具職人の千太郎 (くもんの児童文学)
《小学校高学年課題図書》わずか七才で奉公に出される千太郎、というのが頭にあったから、姉のおこうが奉公に出る場面で、あれ?だった。話はまあ面白かった。江戸時代の建具屋で働く職人たちについて知ることができた。言葉遣いに元気があっていかにもキップのいい、粋な職人たちって感じで楽しかった。組子とか専門的すぎてわからない部分はあったけれど。千太郎の真面目で粘り強い性格、姉のおこうの勇気… よかったと思う。職人としては鳥羽口に立ったばかりの千太郎だが、小さな職人の誕生で終わっているのは好感がもてた。想像の余地がある。
読了日:07月27日 著者:岩崎 京子
ひぐれのお客 (福音館創作童話シリーズ)ひぐれのお客 (福音館創作童話シリーズ)
既存の短編を集めた短編集。タイトルになった作品のように、日暮れから夜にかけてのお話が多かった。やさしくて、あったかい、ため息が出るほど素敵な本です。子ども向けというより、大人の方が懐かしさに心ふるわせながら読んだ方がよいような気がする。刺繍で描かれた挿し絵もあたたかい感じがしてよいですね。続刊も予定されてるようで、また読みたい。
読了日:07月28日 著者:安房直子
風の靴風の靴
なんて爽やかな、家出物語なんでしょうか!解説の神宮輝夫氏が言われている通り、海に出たあとは家出のことなんか忘れてしまっています。風と海とヨットがあるだけです。たった3日間だけど、素晴らしい夏の休暇ですね。おじいちゃんの存在も濃厚。今でも愛する孫をどこからか見守っていそう。風間ジョー(!)もよかった。大人が一人いるだけで違うし、おじいちゃんの遺言も守れてよかったです。アーサー・ランサムと『丘の家のミッキー』思い出しました。
読了日:07月29日 著者:朽木 祥
小さな王さまとかっこわるい竜 (おはなしルネッサンス)小さな王さまとかっこわるい竜 (おはなしルネッサンス)
まぁなんとも可愛らしい王さまですね〜 王さまだけど、威張ってなんかいないやさしい王さまで、この国の王さまは代々、人々に自分の持っている一番よいものをすべてあたえてしまう。だから身なりはとてもみすぼらしいけれど、心は豊かな王さまなのです。いつもそばにいる竜も小さくて、かっこわるい竜。そんなふたりの冒険の旅の、はじまりはじまり〜♪ 読み終わったら、きっとあなたもやさしい気持ちになっているでしょう。
読了日:07月29日 著者:なかがわ ちひろ
夜空の訪問者 (おはなしルネッサンス)夜空の訪問者 (おはなしルネッサンス)
旅するオオハクチョウに出会った少年。オオハクチョウはハクチョウ座に出会うべく旅を続けていた… 星座に出会うまでは、ってどういうこと? と思っていたけど、オオハクチョウが語って聞かせる物語は奇妙で面白いですね。 ギリシャ神話の世界かな? かわいいイラストも魅力です。
読了日:07月30日 著者:斉藤 洋
すきが いっぱい (翻訳絵本)すきが いっぱい (翻訳絵本)
この世のなかもの、みんな好き。大好きなものがいっぱいあると、心がゆたかになる。小さい子に、指差しながら読み聞かせしたらいいでしょう。
読了日:07月31日 著者:マーガレット・ワイズ ブラウン
すてごろうのひろったものすてごろうのひろったもの
西日本読書感想画指定図書。小学校中学年向き。川ネズミのすてごろうが嵐の夜に拾ったものは…。いい話ではある。もう少し絵がかわいければねぇ…
読了日:07月31日 著者:松居 スーザン
魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち
じっくり考える頭を持っている九歳の少女ティファニーの物語。弟を妖精の女王にさらわれて、助け出しにいくけれど、その冒険は意表をこえたものだった。 ディスクワールドを舞台に描かれた作品の一つらしいが、私は初めて、だったので他の作品も読んでみないと…!
読了日:08月04日 著者:テリー プラチェット
ザ・万遊記ザ・万遊記
サッカー以外のエッセイは面白かった。アキレス腱切った話にムズムズしつつ、温泉湯治いいな〜と思いつつ、建物探訪記に笑った! サッカーはまるで興味はないが、オリンピックの話は面白かった。
読了日:08月05日 著者:万城目 学
七人の敵がいる七人の敵がいる
実際に、PTAや子ども会の役員を何度も引き受けさせられている私にとっては身につまされるお話。専業主婦も兼業主婦も二つの立場がわかるだけに。子どもが生まれるまではこんな世界があるとは夢にも思わなかった…選ばれないのがベストだけど、選ばれてしまったら、ひたすら前年度と同じに無難にこなす。陽子のような改革的行動は煙たがれるようです。出る杭は打たれる方式。にもかかわらず、行動したのはすごい。やるからにはあそこまでやらねばならない。なんて生きづらい生き方、そして素晴らしい生き方!到底マネはできないが、尊敬に値する。
読了日:08月09日 著者:加納 朋子
月の恋人―Moon Lovers月の恋人―Moon Lovers
ドラマは全く見る気もなかったし、関心もなかったので、まっさらの状態で読みました。確かにいつもの道尾さんの匂いはまるでなかったけれど、私はそう悪くもなかったです。登場人物にそれぞれ人間的な温もりを感じられてよかったと思います。居酒屋おんちゃんのマスターや常連さんも、北海道でメロン農家を営んでいる弥生のおじいちゃんおばあちゃんも… もちろんシュウメイ、弥生、蓮介、風見の主要人物も。読んでいて心がほっこりします。あまりにわかりやすい恋愛小説で、いつもの道尾ミステリを期待する向きには残念なのかもしれないけどね。
読了日:08月11日 著者:道尾 秀介
ヒットラーのむすめ (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)ヒットラーのむすめ (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)
もしもヒットラーに娘がいたとしたら? 子どもたちのお話ゲームで始まったこの話が、だんだん現実味を帯びてきて…。ハイジという仮の名前で語られた少女と、話を聞かされたマークという少年が繋がっていく。ヒットラーは過去の歴史上の人物だけれど、もしも自分の父親がヒットラーのような極悪人だったとしたら息子である自分はどうしたらいいのか?その逆のことが起きたら、自分の父親はどうするのだろう?様々な疑問が少年の中に生まれてくる。現代にも、ジーンズをはいたヒットラーがいるかもしれない、みな私の子どもたちなのだよ、(続く)
読了日:08月12日 著者:ジャッキー フレンチ
見習い魔女ティファニーと懲りない仲間たち見習い魔女ティファニーと懲りない仲間たち
前作で魔女になりたい少女だったティファニーがやっと見習いとして、ミス・レベルの家に置いてもらえることになった。けれど実際の魔女の修行は行われず、単純な日常的仕事ばかりで、ガッカリのティファニー…意地悪な魔女見習い少女まで登場したりして、前途多難だったが。話は前作よりパワーアップしていた。そして、おなじみナック・マック・フィーグルズたちの言動に大笑い。楽しんで読めた。
読了日:08月17日 著者:テリー プラチェット
マルカの長い旅マルカの長い旅
実話をもとにして描かれたそうだが、戦争のためにすべてを歪められ、失ってしまったユダヤ人の少女マルカの旅は、過酷そのもの。リアルすぎるほどリアルで、胸に迫ってくる。マルカを人に預け、上の娘を連れてハンガリーへ逃亡していく母親ハンナが本当にこれでよかったのかと自問自答する場面が何度も出てくるが、どうしようもなかったのだ。すべては戦争が引き起こしたもの。胸が痛んだ。忘れてはならない、過去の歴史なのだと思った。
読了日:08月19日 著者:ミリヤム・プレスラー
床下の小人たち (岩波少年文庫―小人の冒険シリーズ (2042))床下の小人たち (岩波少年文庫―小人の冒険シリーズ (2042))
小学校の頃に、2巻からしか図書室になくてこの1巻はずっと読まずにきてしまった私。映画化を機にやっと読んだ。確かに訳は古いし、時々意味の通りにくい表現はあったけれど、読みにくいとは思わなかった。それより長い年月すぎてやっと読めたことに、喜びを感じる。同時に、もっと早く読めばよかったとも… こういうことがあって、小人たちは床下を出て野に出たんだ!と、納得した。続きもまた読んでみよう。
読了日:08月20日 著者:メアリー・ノートン
マルベリーボーイズマルベリーボーイズ
イタリア系ユダヤ人が主人公、と知って一体またどんな恐ろしいことが、と身構えた私だけど、時代も場所も違いました。母親の手によって9歳の子どもがアメリカに向かう船に密航させられて…って言うのも十分ひどい話ですが。最初は全く希望も何もなくて、ただ早くナポリに帰りたいと言っていた少年が、ガエターノとピエトロという二人の友達に出会ったことによって変わっていったのが素晴らしいです。商売をすることとか、人種のるつぼニューヨークのこととか、自分が自分らしくある、ということとか。まぁいろいろひっくるめてすべてよかった!
読了日:08月21日 著者:ドナ・ジョー ナポリ
囚われちゃったお姫さま―魔法の森〈1〉 (sogen bookland)囚われちゃったお姫さま―魔法の森〈1〉 (sogen bookland)
魔法の森シリーズ第一弾。いろんなお伽話、童話の元ネタ満載のパロディふうファンタジー。主人公のお姫さまらしくないお姫さま、シモリーンが元気いっぱいで楽しめる。自分からドラゴンに囚われちゃって…ドラゴンの姫に。それにしても魔法使い、あんな方法で!? 深刻ぶることなく、軽く読めました。
読了日:08月24日 著者:パトリシア・C. リーデ
赤い髪のミウ赤い髪のミウ
確かに、主人公の少年、航の性格や過去の設定には違和感を感じないこともなかったが… 小学六年で無免許で環七をぶっ飛ばすとか、中学生に唆されたとはいえ、タバコを万引きして一緒に吸うとか、低学年の子にも影響をあたえてて…とか、えぇーっと思ったけど、都会の方じゃそういうのもありなのかな?わからないけど。沖縄の自然とか、見えないものがいて島を守ってくれてるとか、そういうところはよかった。ミウは、よかったよー。展開は読めたけど。
読了日:08月26日 著者:末吉 暁子,平澤 朋子
ブックカバーを作る―しまい込んでいた布の再利用 アイロンと両面テープでらくらくできるブックカバーを作る―しまい込んでいた布の再利用 アイロンと両面テープでらくらくできる
図書館でふと目について借りてきたが、材料さえ揃えれば、誰にでも作れそう。ただきっちりサイズ計って、根気よく本の通りにできればね。縫うのではなく、両面テープで貼りつけるというのがよいですね。 裏打ち紙を布に貼って作るようですが、それを手に入れるのがちょっと面倒そう。他の材料みたいに、これも100均にあればいいのに…。
読了日:08月26日 著者:えかた けい
ブルックフィールドの小さな家―クワイナー一家の物語〈1〉 (世界傑作童話シリーズ)ブルックフィールドの小さな家―クワイナー一家の物語〈1〉 (世界傑作童話シリーズ)
大草原の小さな家』の少女ローラの「かあさん」キャロラインの少女時代の話。この時代の米国西部の生活に驚く。水道も電気もガスもない生活… 老若男女、子供でさえも力を合わせ、みんなで働かなければ生きていけない世界。お風呂は一週間に一度、洗濯は家族みんなで川から水を運び、お湯を沸かすのも薪が燃料、すべてにおいて苦労の連続。そんな厳しい時代、一つの家族が貧しいながらも心をひとつにあわせ、一生懸命生きていく姿に感動する。子供たちの服も靴もそれぞれ一つきり、兄弟姉妹で次々お下がりを回していくのは気の毒だが(以下続く)
読了日:08月28日 著者:マリア・D. ウィルクス
ふたりの距離の概算ふたりの距離の概算
思い込みからくる誤解、そんな話。マラソン大会の最中に、謎を解くというのがいい。他にない気がして。ふたりの距離、って誰と誰の距離かな、もしかして?って思ってた… そしたら全く予想と違っていた。人がいるだけ誤解が生まれ、疎誤も生じてくるってことですね。そこを、些細な事実を積み上げて本当はこうじゃなかったんだろうか、とあれこれ推理していく過程が面白い。ホータロー謙遜してるけど、いい探偵役してると思うな。これぞ古典部の醍醐味ですね。
読了日:08月30日 著者:米澤 穂信
ペンギン・ハイウェイペンギン・ハイウェイ
面白かった。最初の文章から引き込まれ、ずるずると入りこみました。私の読んだ中では一番、あっていた気がする。不条理SFのようで、早熟な少年アオヤマ君の歯科医院のお姉さんに対する淡い恋物語だったり。アオヤマ君たちが探検する様子に心惹かれたり。この世に存在する様々な疑問を、一つ一つノートに記述し、考察するアオヤマ君、かなり興味深い存在です。そして彼を取り巻く学校の友達や、ノートの書き方を教え、様々なことを教えてくれたお父さん、などなどいろんな人たちがいて、それだからこそ、アオヤマ君の研究も続けることができたのだ
読了日:08月31日 著者:森見 登美彦
世の中への扉 海をわたる被爆ピアノ世の中への扉 海をわたる被爆ピアノ
平和学習に使えるかも。被爆ピアノというのは初めて知った。何でもそうだけど、知らなかったことを学ぶことは大切。こうして、戦争の記憶を後世の人々に伝えていく活動をされている方には頭が下がります。
読了日:09月01日 著者:矢川 光則
くじらの歌くじらの歌
前半と後半のイメージが違う。大人の事情をうまく言いくるめて隠してある。老人と少年という構図はよいが、そこに唐突に夢の話を絡めてくる。読み始めはユダヤ人=リアリズムな物語だと思っていたので、ファンタジーな話とわかって、なんだか拍子抜け。くじらの夢などきれいな場面もあり、よかったところもあるけれど、正直微妙なところです。本文の挿し絵も拍車をかけてる気がする。人物の描かれ方がファンタジーな話に合っていないような。
読了日:09月01日 著者:ウーリー・オルレブ
よろこびの歌よろこびの歌
短編集かと思ったが、一人の主人公を主軸にどんどん繋がっていく物語だった。音楽科の高校受験に失敗し、仕方なく入った普通科の高校で、玲は様々な出会いを得た。それまでずっと自分とは関係ないと思っていた同級生たちだけれど。次の章から彼女ら一人一人の心情が語られる。玲の心が変わるまで、クラスみんなの心が変わるまで…。音楽って楽しいものなんだ、よろこびなんだ、って。不安定な思春期の真っ只中にいる彼女らの、等身大の喜び、悲しみを描いてみせた作者の手腕に拍手を贈りたい。
読了日:09月02日 著者:宮下 奈都
夜行観覧車夜行観覧車
これまでの著者の作品を見ていると、これはさほど毒がないと思った。かといって、清潔とかにはほど遠いけど…。坂の上の高級住宅地に住んでしまった者たちの悲哀というか。人間、分不相応のものは受け入れられない、ってことか。出てくる登場人物どこかしらに、傷があり、毒がある。今は普通にしている人でも、ちょっと見方を変えたり、ちょっと何かをかけ違えただけで、ぱっくりと割れた穴から、何かが首をもたげてくる。どこにも、不幸を呼ぶきっかけはある。ただ足を踏み出すか踏み出さないかの違いだけ。その境界線はどこにあるのか。(続く)
読了日:09月03日 著者:湊 かなえ
野川野川
野川という響きがとてもいい。郷愁をかきたてる。この地を訪れたことはないけれど、わかります。野川と武蔵野の自然の様子を描いた文章に、想像力が喚起され、情景が浮かび上がってきます。これが読書をする上での最大の喜びですね。見ていないものでも本に書いてあることを読めば、あるいは人の話を聞いてもだけど、実際に経験したかのように感じることができる。河井先生の話は面白いですね。音和のお父さんとのエピソードもよかったし、吉岡先輩も… こんなよくできた中学生はいないかもしれないけど、現役中学生たちに読んでもらいたいです。
読了日:09月04日 著者:長野 まゆみ
雲のはしご (物語の王国2)雲のはしご (物語の王国2)
小学五年の2人の女の子たちの友情話。私立中学受験のため塾通い、それも二年生の頃からって…。私の住んでる地域では考えられない。塾に行くために、他のいろんなことをあきらめてるんだろうな。かわいそうに、と思うけど、本人は納得づくなんだな。今のうちにたくさん勉強して頑張っていい学校にいったら、後でいい生活ができるって?私立中学なんて、何も無理していかなくてもいいと思う。環境がいいのはありがたいけど…。話はハッピーエンドだったけど、保健室の男の子はどうなった? それが気になる。中途半端に入れただけ、って感じ。
読了日:09月05日 著者:梨屋 アリエ
市立第二中学校2年C組市立第二中学校2年C組
たった1日でも、クラス全員揃えればこんなにすごいドラマになるんですね!たいそうなことは起こらないけど、中学2年という、微妙な年齢の彼らの現実が描かれてます。いじめとか恋愛とか勉強とか。生の声が聞こえます。 たびたび前のページに戻って確認したり、巻頭にあった座席表見返したり。誰が誰とか眺めては、ふむふむ〜でした。初めて読んだ作家さんだけどよかったです。
読了日:09月07日 著者:椰月 美智子
モーツァルトはおことわりモーツァルトはおことわり
モーツァルトの件については質問してはいけない。世界的に有名なバイオリニストにインタビューすることになった私に、上司はそう言った。プライベートについても質問していけないと言われ、一体なにが…と思うが、そんなことがあったとは。戦争の真実を正しく伝えていくことは大切なこと。世代を超えて語り伝えられていってほしい。パオロ少年はバイオリンの奏でる音楽によって、失われたものを取り戻し、再生への道を歩んでいったのだろう。父母から伝えられた音楽とバイオリン。それは戦争の記憶を保ちながら、次の世代へと伝わっていってほしい。
読了日:09月08日 著者:マイケル モーパーコ
グリーンフィンガー 約束の庭グリーンフィンガー 約束の庭
グリーンフィンガーとは緑の指…。学習障害をもつ少女ケイトが夢中になって庭の土を掘り返し、耕して植物の種を植える。頑固者だと思われた老人ウォルターに教えられてのことだった。古い家を作り直し、人が住める居心地のよい空間にしたのはケイトの父。庭作りには、友達のルイーズや弟のマイクとその友達も手伝ってくれた。家と庭の再生とともにケイトの両親の不仲も解けていくようで、妹エミリーの誕生日にウォルター老人が訪れる場面は何とも言えずよかった。庭を作ることによって、障害を克服し、心身ともに成長をとげた少女の姿には感涙もの。
読了日:09月10日 著者:ポール メイ
秘密の菜園 (TEENS’ ENTERTAINMENT)秘密の菜園 (TEENS’ ENTERTAINMENT)
う〜ん… 思っていたのとは違ってた。サカイとタキイには笑ったけど。他人の思ってることは見えない、それですれ違い、かけ違ったボタンだったけど。 『秘密の花園』といえば、絶対バーネットよね。松田聖子だったなら、何か違う。男二人だけど、なんかちょっとアヤシい雰囲気ただよって、どぎまぎしたり。お日さまの下で育ったトマトってホントに甘くて、おいしいんだよ〜!真っ赤に色づいてくるトマトの実に、またどぎまぎ? 視点は違うけど、同じ文章読まされるのはちょっと閉口した。
読了日:09月11日 著者:後藤 みわこ
黄金旋律  旅立ちの荒野 (カドカワ銀のさじシリーズ)黄金旋律 旅立ちの荒野 (カドカワ銀のさじシリーズ)
長い序章だった。暗く辛い現代編をくぐり抜けた先は光あふれるファンタジーの世界だった。設定は遠い未来の話だが、手法はファンタジーだと思う。翼の生えた猫、角が生えた馬の突然変異?ユニコーンなど…まさに異世界ファンタジー。 病院の近くに生えていた桜の木が、過去に消えていった人々の思いを伝えてくるようで、この作者得意の抒情を感じた。 旅立ちの荒野…臨とソウタはこれからどんな出来事や人々に出会っていくのだろうか。続きが楽しみ。
読了日:09月14日 著者:村山 早紀
船に乗れ!〈1〉合奏と協奏船に乗れ!〈1〉合奏と協奏
最初の出だしが不明な印象だけれど… その後の本編は先に行くほど面白く、加速がついてストーリーが転がっていった。何より音楽がこの上もなく好きな人たちの話は、読んでいて快感を呼ぶほどだ。本当に耳もとで音楽が奏でられているかのようで…。早く続きを読みたい!という思いに急かされる。読み終わってから、冒頭にかえるとふと不安が首をもたげてくるような気もする。それを含めて先を急ぎたい。
読了日:09月16日 著者:藤谷 治
船に乗れ!(2) 独奏船に乗れ!(2) 独奏
1巻冒頭で匂わせていた不安と暗闇が、ここにきてどっと押し寄せてきた、って感じだった。一体、何が悪かったのか?サトルはただただ、音楽を愛し、研鑽を積んでいただけだったろうに。幸福の絶頂だった1巻終わりが信じられない。音楽だけを追求していくことの難しさを感じた。演奏するのは人間だから。その人間に感情のブレがあったら… サトルの南への思いは真実であっただろうと思うだけに、あれはつらい。一体、彼女に何があったんだろう。一時の気の迷いにしても酷すぎる。そしてサトルにもその歪んだ波は降りかかってきた。(続く)
読了日:09月18日 著者:藤谷 治
船に乗れ! (3)船に乗れ! (3)
結局、最後まで暗雲は晴れることなく… 転がるように墜ちていく話だった。唯一、救われたというか、一瞬の光明を見たのは文化祭で彼女が戻ってきた瞬間だった。最後のオーケストラでの演奏も…。決してうまくできたわけでもないだろうが、ひっちゃかめっちゃかになりながらもみんなで作り上げた世界。高校生としては十分だったろう。サトルのその後の人生は後悔ばかりだったのかもしれないが。それこそ人生は航海のようなもの。生きている限り、みなそれぞれの船に乗っているんだ。苦味とともにそう思う。
読了日:09月19日 著者:藤谷 治
モンタギューおじさんの怖い話モンタギューおじさんの怖い話
先に船乗りサッカレーの話を読んでしまったので、こちらの怖さは五割減のようだったが、子どもたちが怖い目にあって… という話なので、同じ年齢の子どもはたまらない魅力があるのかも。怖いもの見たさで…。モンタギューおじさんも謎めいた存在で想像するだけでドキドキすると思う。それぞれの話もまとまっていて、いかにもという感じにも関わらず飽きずに読めた。
読了日:09月23日 著者:クリス プリーストリー
シャーロット・ドイルの告白シャーロット・ドイルの告白
19世紀の良家の子女シャーロットがイギリスへの航海で見つけたものは… 海洋冒険小説だけど、女の子が主人公というので、生き生きと感じられた。この時代にこんなふうであることは異常としか見られないのかな。シーホーク号に乗って出発した彼女にはどんな未来が待っているのだろう、と想像してしまった。
読了日:09月23日 著者:アヴィ
ティナの明日ティナの明日
1940年代スペインのセゴビアという地方都市が舞台。中学生のティナは毎日、家では親の手伝いばかりさせられて、勉強する暇もない。高校生の兄は奨学金をもらって高校にいき、親にも勉強しろと言われるのに。学校の先生から宗教コンクールに出場するように言われたティナが家で勉強しようとすれば、勉強する暇があったら手伝いをして、と責められる。こういう状況がここにもあったのだ。謂われのない差別と偏見。内戦があったり、戦争で逃げ回ったり。ティナが出会った名前も知らない青年も同じ。彼の母親は老いてから魔女と近所の人から蔑まれ、
読了日:09月24日 著者:アントニオ マルティネス=メンチェン
あなたに贈るキス (ミステリーYA!)あなたに贈るキス (ミステリーYA!)
とても好きな世界。何よりキスをすることで致死率100%の病に感染してしまうという設定が。閉塞的な全寮制の学校という世界でじんわり効いてきます。近未来社会の事物もいかにも実現しそうで繋がっている感あるし。少女の純潔(ぽっ…)、異性より同性に対する信頼や憧憬の思い、などなど女子ならではの魅力を感じます。キスは禁忌とされながら、その行為が崇高なものに思えてしまう。砂川くんと先生の関係が何だかとっても魅力的! ラストはまぁ、よくはないけど彼女は生きていているから。純潔では生きていけない?ビターな結末でしたね。
読了日:09月25日 著者:近藤史恵
消えたヴァイオリン (SUPER!YA)消えたヴァイオリン (SUPER!YA)
18世紀ウィーンを舞台にした冒険ミステリー。元気な女の子が活躍する話は読んでいて気持ちよいものだが、本書も父の謎の死を解明し、真っ正面から立ち向かっていく少女テレジアの姿が小気味よい。当時の社会情勢や、活躍していた音楽家たち、とくにロマと呼ばれる民族の様子を伺い知ることができてよかった。テレジアにとっては父のような存在である、人情味あふれるハイドン先生もじつによい。 ストーリー展開も早く、冒険ものとしては魅力的。
読了日:09月28日 著者:スザンヌ・ダンラップ
星が導く旅のはてに星が導く旅のはてに
少女ミトラは古代ペルシア王家の末裔という誇りだけを胸に抱いて生きのびていた。かつての豊かな暮らしに戻ることを信じたゆえに、兄を死地へと追いやり、他人の夢を見て行く末を当てる夢見の才のある弟を金のために売ってしまう。彼らを利用する者と助ける者との狭間にありつつ、少女は自問する。高貴な血をひく自分たちにはもっと相応しい場所があるのではないか。こんなところで終わってしまうはずがない…。やがて遥か西方の地へとたどり着いた少女が最後に見たものとは?(コメント欄へ続く)
読了日:10月06日 著者:スーザン・フレチャー
消えちゃったドラゴン 魔法の森2 (創元ブックランド)消えちゃったドラゴン 魔法の森2 (創元ブックランド)
2巻は王さまらしくない王さま、魔法の森の王メンダンバーが主人公。おなじみ・おとぎの国の世界に、新しいタイプの人物たちが次々に登場してきてテンポ良く話が進みます。消えちゃったドラゴン、カズールの行方を捜して、旅にでたシモリーンとメンダンバー。似合いのカップルになりそうな予感ばりばりでした。前巻よりさらに楽しく読めてよかったです。魔術師テレメインがいい味だしてる、と思ったのは同じです。魔法の森での、魔法の描写とか、魔法使いと魔術師の違いとか、FT好きの血を騒がしてくれる部分もあってよかったです。続きが楽しみ。
読了日:10月09日 著者:パトリシア・C・リーデ
プラチナデータプラチナデータ
一番の感想は管理社会は怖い!ということでしょうか。おまけにいつの世も得をする者は限られている、という…。 世の中なんて、不公平なものなんだ! とやりきれなさが残る。彼女の存在だけが爽やかだったけれど…。 人間は原点に立ち返るべきものなのかも?
読了日:10月12日 著者:東野 圭吾
乙女の密告乙女の密告
芥川賞受賞作を読むのは初めてだけれど、まぁ普通に面白く読めた。京都の外大に通う乙女たちの狭い世界と、ユダヤアンネ・フランクの閉ざされた世界とを重ねあわせ、他者とは?自己とは?と疑問を提示している。『アンネの日記』を読まねば、と思う。アンネは他者(オランダ人)になりたかった。と同時にユダヤ人である自己を否定できなかった。ある限られた空間における、自己と他者との関わり…。スピーチコンテストでアンネ・フランクを暗唱するみか子が知った真実とは? バッハマン教授のキャラクターが面白すぎる。
読了日:10月13日 著者:赤染 晶子
幸せを届けるボランティア、不幸を招くボランティア (14歳の世渡り術)幸せを届けるボランティア、不幸を招くボランティア (14歳の世渡り術)
ボランティアとは?考えるいいきっかけになった。自分優先のボランティアになっていないかどうか?勘違いのボランティアになっていないかどうか?社会のしくみをよく知る必要を感じました。中学生にもぜひ読んでもらいたい。もちろん大人の方も!
読了日:10月16日 著者:田中 優
土曜日は灰色の馬土曜日は灰色の馬
ちょっと時間がかかってしまったのは、私の側の事情で、恩田さんのせいでは全くない。年代的にも同世代、共感できる話題もあれば全く太刀打ちできないジャンルもあり… あらためて恩田陸という作家の多様性を感じた。漫画の話は単純に面白かった。映画や音楽に関しては何も言えない私だけど、小説はまた読みたい作品が増えて嬉しい限り。
読了日:10月21日 著者:恩田 陸
うごいちゃだめ!うごいちゃだめ!
泳ぎでも飛ぶことでも決着がつかなかった、がちょうとあひるが‘うごいちゃだめ’競争をする。可愛らしい絵と昔話のように繰り返しのある文章がいい。とてもユーモラスで、かつ友情味あふれるストーリーだ。
読了日:10月21日 著者:エリカ シルヴァマン